巨大橋が空を翔るー瀬戸内海に橋が架かる

橋の架かる島々  切り絵/大西良介

身びいきのようですが、とりわけ瀬戸内の海は詩情溢れる風景に思えます。

四季折々に、朝に夕にさまざまに美しく変化する様は、いとおしさを覚えます。
特に、有名な瀬戸の朝凪・夕凪は時間が止まったかのような 浪静かな海面に、島々を浮かばせてくれます。

「ゆうなぎにと渡る千鳥 浪まより みゆるこじまの雲にきえぬる」
                                                                       
-新古今和歌集 後徳大寺左大臣ー

いにしえの歌に詠まれた大河のような美しい海は
東の紀淡、鳴門、西の関門、豊予の四つの海峡で太平洋と日本海に通じています。

島の少ない「灘」と呼ばれる海域と「瀬戸」と呼ばれる海域には大小三千の島々が点在しています。
ほぼ全域にわたって国立公園に指定されています。

沿岸部には、多くの港町が古代から近世にかけて発展してきましたが、
美しい内海も悪天候に見舞われると様相は一変し全ての航路が寸断されてしまいます。
濃霧の発生、強風のたびに繰り返される停船命令、遭難
平均深度30mの海域には多くの浅瀬、暗礁があり、急な潮流のためなどの海難事故

そして経済が発展し東西幹線網が発達しても、
本州と隔てる海のわずかな距離のために取り残されてしまった島国四国という環境に
巨大橋が架かったのは、時代の当然の成り行きでしょうか。

夢の架け橋と言われるように、その昔明治の半ば、大久保諶之丞という
香川県の先駆者は塩飽諸島を橋台にして、本州まで橋を架けようと
提案したそうです。

大ぼらふきの諶之丞と人々に笑われたと言い伝えられていますが、
讃岐鉄道株式会社の丸亀ー琴平間の開通祝賀式での発言だったそうです。

時代を先取りした発言には、未来もよくテーマにした 漫画家
手塚治氏もビックリかもわかりません。(余談でした)

そして遂に三本もの巨大橋は、島から見上げると天空を駆け巡るかのように
架かり、大久保諶之丞さんも それこそビックリされている事でしょう。

島の坂道
切り絵/大西良介

大西良介 切り絵ノスタルジー   懐かしのわらべ歌:扉 無料の切り絵素材集ふるさと記念切手:二十四の瞳